事業運営において資金繰りは避けて通れない課題です。宿泊業は観光客の動向や季節要因に大きく左右され、サービス業は人件費や運営費の割合が高いため経済の変動に敏感です。製造業も設備投資や材料費が高く、景気の変動に影響されやすい傾向があります。
特に、小規模で経営している企業は外部要因の影響を受けやすく、資金繰りが厳しくなることが多いです。そんな中で、心強いサポートとなるのが「小規模事業者持続化補助金」です。小規模事業者持続化補助金は、事業の持続と成長を目指す小規模事業者を支援するために設けられたものです。今回は小規模事業者持続化補助金の概要や補助金を受けるための流れを説明します。
小規模事業者持続化補助金の概要
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は、日本国内の小規模事業者が事業の持続的な発展を目指して行う取り組みを経済産業省が支援するための補助金制度です。この補助金は、商工会議所や商工会を通じて支給され、主に販路開拓や生産性向上を目的とした取り組みに対して支給されます。
小規模事業者の定義
小規模事業者とは、従業員数が一定数以下の法人・個人事業・特定非営利活動法人を指します。
業種 | 従業員数 |
---|---|
製造業・その他 | 20人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
商業・サービス業※ | 5人以下 |
※宿泊業・娯楽業を除く
補助金の対象となる取り組み
- 販路開拓
新規顧客の獲得や市場拡大を目指した活動が対象となります。
例:新商品の開発、広告宣伝、展示会への出展、ホームページの作成・改良など - 生産性向上
生産性を向上させるための取り組みも補助の対象です。
例:従業員の教育・研修、製品の品質改善、業務フローの見直しなど - 業務効率化
事業運営の効率化を図るための設備導入やシステム開発も対象です。
例:新しいソフトウェアの導入、機械設備の購入、業務プロセスの改善など
補助上限額と補助率(2023年11月時点)
補助金の額や補助率は、取り組み内容や申請年度によって異なることがありますが、一般的な補助額と補助率は以下の通りです。
申請類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
---|---|---|---|---|---|
補助上限※ | 50万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 | 200万円 |
補助率 | 2/3 | 2/3 ※赤字事業者は3/4 | 2/3 | 2/3 | 2/3 |
※免税事業者からインボイス発行事業者に転換する小規模事業者は、一律50万円上乗せになります
小規模事業者持続化補助金の申請方法
申請手続きの流れ
- 経営計画の作成
- 会社の現状を詳しく分析し、将来の目標を明確にした経営計画を作ります。
- 申請書類の準備
- 申請に必要な書類を準備します。
- 申請書の提出
- 作成した申請書を、所轄の商工会または商工会議所に提出します。
※詳細の申請方法については、公式サイトをご確認ください。
- 作成した申請書を、所轄の商工会または商工会議所に提出します。
- 審査
- 提出された申請書が審査され、採択されると補助金が交付されます。
メリットとデメリット
メリット
- 資金調達の負担を軽減できる
自社で全額負担する必要がないため、資金調達の負担を減らすことができます。 - 経営改善のきっかけになる
補助金を活用して、経営計画に基づいた取り組みを行い、事業の改善を図ることができます。 - 競争力を強化することができる
新しい技術やノウハウを導入することで、競争力を強化することができます。
デメリット
- 補助金の申請通過率が低下している
全ての申請が採択されるわけではなく、審査に通過しなければ補助金は出ません。採択率は今まで60%前後で推移していましたが、第15回(2024年6月発表)は今までで最も低い41.8%まで激減ています。 - 補助金支給までは、資金の自己負担が必要になる
補助金は後から支給されるため、最初に自費で全ての費用を賄う必要があります。手元に資金がない企業にとっては大きな負担となります。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が事業の成長や発展を目指して行う取り組みに対して強力な支援を提供する制度です。販路開拓や業務効率化、生産性向上など、幅広い分野で利用できるこの補助金を活用することで、小規模事業者は競争力を強化し、持続的な成長を実現することができます。しかし、申請手続きや報告義務など手間がかかるのも事実であるため、事前に十分な準備と計画を行うことが重要です。商工会議所や商工会のサポートを受けながら、効果的な補助金活用を目指しましょう。