IT業界は社会的ニーズが高まっている一方で、資金繰りが厳しい現実があります。そのため、システム開発、アプリやホームページ制作などを行う企業がファクタリングを利用するケースが増えています。その中でも、受託開発を行う企業やSES事業を展開する企業、フリーランスのエンジニアが多く利用しています。
今回は、IT業界でファクタリングが多く利用される理由について説明します。
IT業界でファクタリングが活用される理由
仕事量の変動により収入が安定しないため
IT業界がファクタリングを利用する一つ目の理由は、時期によって仕事量が大きく変動し、月の収益が安定しないためです。
他の業界では、繁忙期や閑散期が特定の期間に発生しますが、IT業界では、特定の期間に仕事量の波が発生しません。それは、仕事量が増減する一番の理由は、多くのプロジェクトがチームで行われるためです。小さなプロジェクトであれば、空いているスタッフがいればすぐに受注できますが、通常は複数人で取り組むため、タイミングが合わないと仕事を受けられません。このため、会社全体の仕事量や売上が大きく増減し、収益が安定しにくくなります。
しかし、IT企業では人件費が経費の大部分を占めており、プロジェクトが進行していなくてもスタッフの給料は発生します。そのため、安定した収益が見込めない場合に、ファクタリングを利用して資金を確保する企業が多いのです。
納品後に入金が行われることが多いため
大規模なプロジェクトであれば、着手金や段階的な支払いがあるケースもありますが、1000万円以下のプロジェクトでは納品後に一括で支払われるのが一般的です。例えば、8月に納品した場合の一般的な入金期日は9月末になりますが、スタッフへの給料は入金期日前の25日に発生します。そのため、資金に余裕がない場合はショートしてしまう可能性があります。さらに、納品が予定していた納期から遅延してしまうと、その分入金も延期されることと、資金繰りが一層難しくなります。
このように、入金前の支払いをカバーするために、ファクタリングが活用されています。
「下請法」の限界のため
IT業界では、元請け企業と下請け企業の間に、多重下請け構造があります。この構造において、下請け企業は「下請法」によってある程度保護されています。下請法は、元請けが下請けに支払う期日を「成果物を受け取ってから60日以内」と定めており、下請け企業の資金繰りを支援するためのものです。しかし、この法律があっても、これは全業種の平均1.23ヶ月に対してIT業界の平均回収サイトは約1.78ヶ月と約半月長くなっています。それでも、下請法が定める60日以内の支払い規定に違反しているわけではありません。そのため、下請け企業は回収期間が長くても、法律の範囲内であれば受け入れるしかないことが多く、この間の資金繰りのためにファクタリングが利用されます。
SES事業における支払いフローの問題
SES事業(System Engineering Service、システムエンジニアリングサービス)は、クライアント企業へエンジニアを派遣し、IT技術支援を提供する仕組みです。この事業では、雇用しているエンジニアへの給料支払いがクライアントからの入金よりも早く行わなければならないため、キャッシュフローに問題が生じることがあります。具体的には、エンジニアの給料は月末締めの翌月25日払いであり、クライアントからの入金は月末締めの翌々月末になることが一般的です。
そのため、入金前の支払いをカバーするために、ファクタリングが活用されています。
まとめ
このように、IT企業がファクタリングを利用する理由は、仕事量の変動や入金サイクルの遅れによる資金繰りの問題があるためです。ファクタリングでは、売掛先倒産などによる未回収リスクも保証されるため、効果的に活用することができます。
資金繰りでお困りの際は、「小さな会社の資金調達」へお気軽にご相談ください。